皆さま、日本でも大判のアズレージョ(ポルトガルタイル)は実現可能です。
お客様ご自身の想いとともに非常にポルトガルらしさも尊重した素敵な事例をご紹介します。
「ポルトガルで見たあのアズレージョの迫力、美しさがどうしても忘れられず、自宅にも飾りたい」とご相談いただきました。
いただいたお題は、THANKS、DREAMなど日々I様が大切にされているものの言葉を入れる、大切な愛犬、愛猫も描き込む、家族というのもテーマでした。ポルトガルでよく見かける(王族、貴族などの)紋章にもご興味がおありでした。盛りだくさん!
一方で、玄関先のファサード、アズレージョを飾るには十分な広さのある場所でした。
幅1800mm。高さはほぼ制限なし。これだけの面積があると様々なデザインの可能性があります、たくさんの資料をみて、ポルトガルとやりとりしながら、基本のデザインを絞り込んでいきました。
基本の構図(構成)は、屋外で天井高の制限がないため、住宅ではなくもっと大きな空間にあるアズレージョから起草して、この基本デザインにたどり着きました。
足元にあえて白を持ってくることでメインの絵画に目線が行くように工夫をしています。メインの組タイルの部分は、訪れるどなたにも受け入れられやすいモチーフにしました。
背景のパドラォン(連続パターン柄)は当店を信用してくださり、お任せ、ということで当店が選びました、古典的になりすぎないように普遍的な植物モチーフにしました。
紋章は、あまたあるサンプルからI様にひとつチョイスしていただき、それをアレンジしました。描き込む4つのモチーフ(ぶどう、十字架、麦わら帽子、太陽)もI様と当店で決めました。りりしさの中にもかわいらしさが、ポルトガルらしいモチーフが並びました。
さて。ここで難題に差し掛かりました。
人物画の作風です。絵画において顔の好みはひとそれぞれ、個人差があります。当店に飾ってある男女の絵画を気に入って下さったのですが、表情や顔だちがお好みでないとのこと。もうちょっとすっきりした顔立ちがいいと。「すっきりした」日本のお客様ならよくある美意識です。
しかしこれをポルトガル人の描き手にどう伝えるか。ポルトガル語に「すっきりした」という単語はありません。
さっそくリスボンの日本人スタッフとまず話し合いをしました。その後彼女がデザイナーたちと半日かけて言葉を尽くし、深く長いミーティングをしました。最初は通じなかったものの、会話のやりとりのなかで一人のデザイナーが、「つまり、こういうこと?」ということでピン!と来てくれました。「そう、それ!」双方の渾身のコミュニケーションが実を結びました。